ひよこらぼ

自作のTSF小説(変身・憑依・入れ替わり等によって性転換する小説)を掲載していく予定です。

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神と悪魔と存在の手3

 俺の両手には不思議な力が宿っている。右手で触れた相手に自分の存在をコピーし、左手で触れた相手の存在を自分にコピーできるのだ。
 だが、最近ではこの力を使わないようにしている。俺という存在がなくなってしまうという恐怖からだ。手に力を込めるとこの力が発動するようなので、人に触れるときには力を込めずにいた。

 そんな中、俺はこの力を使えるようになるきっかけとなった二人に再び出会ってしまった。



「今日こそお主と雌雄を決する時」
「上等だ、かかってこいよ」
 大学の講義で遅くなった帰り、前と同じ公園でまたも二人が言い争っていた。
「おい、あんたら!」
 俺は巻き込まれないように、遠くから叫んだ。
「ん? おお、お主は」
「何だぁ、あのときの奴か」
 二人は俺に気づき、一旦臨戦状態が解かれる。よく見ると神と呼ばれていた年老いた男は右手に包帯が巻かれていて、悪魔と呼ばれていた男は左手に義手をしていた。
「久しぶりだな」
「どうかね、手の調子は」
「どうもこうも……」
 俺はこの両手のことについて二人に話した。右手で存在を他人にコピーしてしまうこと、左手で他人の存在をコピーしてしまうこと。両手を使うことで存在を入れ替えることなどこれまで起こったことを全て話した。
「ほう、そんなことが。わしの神の右手と、そやつの悪魔の左手があることで、存在を入れ替えることも可能とはな」
「おもしろい現象だな。存在を自由自在に操れるのか」
 感心する二人。しかし、そのせいで、自分の存在が無くなってしまう危険もあるから、たまったものではない。

「何とかならないのか?」
「そうじゃな……、今すぐにという訳にはいかんが、対策方法は考えておこう。それまでは、もし戻れなくなったらわしを呼ぶといい」
「わかった。頼むよ」

「まて、こいつだけに良い格好をさせるのは気に食わねーな」
 悪魔の男が、神の老人との会話を遮る
「えーと……、そうだ、一ついいことを教えておこう。俺の手で人からコピーできる存在については、実は強弱を決められたりできるんだよ」
「強弱?」
「相手の存在をコピーする際に手に力を入れるだろ。そのときの力の入れ具合を変えれば、コピーできる存在の強弱も変わってくるんだ」
「……よくわからないな」
「まあ、言葉では説明しづらいな。いろいろ試してみてくれ。もし、変なことになったら俺が何とかしてやる」
「ありがとう。悪魔と呼ばれてるのに、以外といい奴だな」

「ふん。何だか今日はこのじじいと争う気が失せた。決着はまた今度つけるぞ」
「望むところだ。ちなみにこの男が言った存在の強弱の話は、存在を与えるわしの手の力でも同じようにできるからな。いろいろ試してみるがいいぞ」
「真似するんじゃねーよ」
 言い争いとしながら、公園から慌ただしく消え去った。
「あれで神と悪魔か。何をやってるんだか」
 妙に人間くさい神と悪魔を見て、俺は苦笑した。


 次の日、俺は大学に行くためにアパートを出る。そこへ同じ階にに住んでいるOLが同じくアパートから出てきた。
「あ、おはようございます」
 そのOLに挨拶をする。この人とは軽く挨拶を交わすぐらいで、あまり面識がない。
「おはようございます、ってきゃあ?」
 俺の目の前でOLつまづき、転びそうになる。俺はとっさに左手に力を込めて彼女に触れてしまった。
「ありがとー、智美!」
 急に口調が変わるOL
「あ、うん」
 自分の姿を確認する。俺は女性物のスーツを着ていた。
「OLになっちゃったのか……」
 キュッと引き締まったウエスト、タイトスカートから張り出ているお尻に向けて掌を這わす。同世代には無い大人の女性の体がそこにあった。
「年上の女性って言うのも良いな……」
「ちょっと何ボーっとしてるの。会社遅れちゃうよ」
「えっ、ちょっと!?」
 俺の手を引き、駅の方へ向かった。

「まいったな……」
 今の俺は、目の前にいるOL(綾さんと言うらしい)と同じ会社に勤めてるOLという存在になっているのだろう。同じアパートに住んでいるということで、友人という関係になっているのかもしれない。
「あの、綾」
「ほら智美、もうすぐ発車しちゃうから」
 鞄に入っていた定期を取り出す。いつの間にか持っていた鞄も安物のショルダーバッグから、ブランド物の鞄に変わっていた。
「仕方ない、今日はOLとして過ごすしかないか」
 大学の友人に触れば元に戻れるはずだ。将来の就職活動に役に立つかもしれない。この際、割り切ろう。
「……ってあれ?」
 考えごとをしていたら、いつの間にか電車に乗っていたようだ。しかし、朝のラッシュにしては、乗客が少ないような。
「都心とは反対側の車両ってわけじゃないよな」
 周りを見ると、通学に向かう女子高生や、女子大生。それに俺と同じ、OLの姿の女性がいた。
「あ、そうか」
 ここは、女性専用車両だ。綾さんはいつも女性専用車両に乗っているのだろう。当たり前か。わざわざギュウギュウ詰めの車両に乗って痴漢の被害に遭うより、この女性専用車両に乗った方が楽で安全だ。
「わっ!?」
 電車が駅に停車しようとする。慣れないハイヒールのため、俺はバランスを崩してしまい、隣にいた女性にの胸元に倒れ込んでしまった。柔らかい感触が顔に伝わり、女性の香水の匂いが鼻を通り抜ける。
「す、すみません」
 もっとこの状態でいたかったが、そうもいかない
「いえいえ、気をつけてくださいね」
 笑顔で答えるその女性。元の自分の姿だったらどんな顔をされただろうか。そもそもギュウギュウで倒れ込むということも起こらないかもしれない。
「女性専用車両って……いいな」
 俺は、女性専用車両を堪能していた。2、3駅を過ぎれば座席が空き、簡単に座ることができた。それに女性だけなのでガードが甘いのだろう。目の前に短いスカートを穿いた女子高生が、足を結構開いて立っていた。ちょっと凝視すれば中が簡単に見えそうだ。それに隣に座っている女子大生と思われる若い女性。完全に熟睡していて、服がはだけていることに気がついていない。胸元の大きな膨らみが見放題だ。しかもそれを見ていても咎められることはない。そう、俺も女性だからだ。
「智美、降りるよ」
「あ、うん」
 綾さんが働いている会社の最寄り駅に着いたらしい。もうちょっと女性専用車両を楽しみたかったんだけどな。名残惜しいが、俺は綾さんについて会社に向かった

「へえ……」
 綾さんの働いている会社は誰でも聞いたことのある総合商社だった。綾さんはそこの一般事務職らしい。
「俺が大企業の社員か……、へへ…」
 にやけながら綾さんに着いていくと、綾さんはどこかの部屋に入っていった。俺もそこに入る。
「うおあっ!?」
 目の前にはOLの制服を着た女性がたくさんいた。中には下着姿の女性も。
「女子更衣室か……?」
 一般事務職はスーツではなく制服着用が義務づけられている。当然綾さんも着替えるためにここに入るのは当然だ。
「ということは……、俺も?」
 綾さんの存在をコピーしたのだ。当然おれも一般事務職ということになる。見ると綾さんのろっかーの隣に俺の名前、福山智美とかかれたロッカーがあった。
「これを着るのか」
 フリルのついたブラウスに、淡い黄色のタイトスカートそしてスカートと同色のベストがロッカーの中にかけられていた。
 俺は周りの女性の着替えている様子を見ながら着替え始めた。

「これで良いのかな」
 悪戦苦闘しながら着替えを終える。鏡には淡い黄色い制服に身を包んだ女性の姿が映っていた。
「動きにくいな……」
 スカートが小さい。足が大きく開けない。自然と内股になってしまう。

――ジリリリリ
 始業5分前のチャイムが鳴る。すると女子更衣室のOLは一斉に部屋を出て自分の職場のフロア向かう。
「行くよ、智美」
「あ、うん」
 綾さんにつれられて俺も職場のフロアへ向かった。

 俺(と綾さん)の仕事はPCを使った伝票処理や雑務が多くそんなに難しい内容ではなかった。が、俺にとっては初めてのことだらけで、失敗して周りに迷惑をかけていた。綾さんに聞こうかと考えたが、綾さんも忙しくしている。
「それにしてもやることが多いんじゃないか」
 改めて自分のやっている仕事をみると、妙に簡単な雑務をやっていることが多い。最初はこれが事務職なんだと割り切っていたが――
「福山君これコピー」
「福山君、これ資料作ってくれ」
「福山君、これゴミ箱に捨ててくれ」
「福山君、コーヒーいれてくれ」
 一人の男にばかり雑務を押しつけられている。忙しいから雑務をお願いしているならまだしも、その男は特に何か仕事をしている訳でもなく、PCの前で腕組みをしているだけだった。
「災難だね、智美さん。あの田山課長に捕まって」
 同じフロアの人が、話しかけてきた。
「あの課長、人に仕事をおしつけることが自分の仕事だと思っているからね。いつもは綾さんが対応しているけど」
 なるほど。忙しいのはあの田山課長のせいってわけか。
「こら、福山君。手が止まっているぞ。無駄話しない」
「す、すみません」
 さっきから自分の手は全く動いてないじゃないか。俺は小さく悪態をつく。管理職だからって、雑用ばかり押しつけやがって。

「……ん、そうか、管理職じゃなくなればいいんじゃないか」
 俺は自分の右手を見た。
 そうだ、折角だから昨日神と悪魔に言われたことを試してみよう。たしか存在に強弱がつけられるって言ってたはずだ。
「おい、福山君。これを頼む」
 田山がまた仕事を押しつけようと俺のデスクの前に近づく
「あ、その前にちょっといいですか」
 俺は立ち上がると、右手に今までより弱く力を込める。そして田山に触れた。
「何だ突然……な、うわあ」
 田山の体に変化が始まる。薄く白髪の混じった七三分けの髪が、しっとりとした黒色のストレートに。平らな胸に膨らみが。ぽっこりと出ていたお腹が、すっきりとしたウエストに。そして紺色のスーツが淡い黄色のOLの制服に替わり、ストッキングに包まれたすらっとした足になっていた。田山に、OLという存在をコピーしたのだ。
 見た目には普通に存在をコピーしたときと変わらない。力を弱くしたことで何か変わったのだろうか。俺がそう思っているとーー。
「な、何なんだ、これは? なぜ俺がこんな格好を……?」
 田山の様子がおかしい。
「おい、福山くん。君が何かしたのか?」
 OLとなった田山が俺につかみかかってきた。
「え?」
 おかしい。何で田山が自分のことをOLとして認識してないんだ。
「ちょっと田山さん。ふざけてないで仕事に戻ってよ」
 綾さんが田山に注意する。そして田山を引っ張って綾さんの隣の席に座らせる。たしか、さっきまではそこに机なんて無かったはずだ。綾さんの口振りからしても田山のことをOLとして認識している。
「何をする。俺の席はここじゃない!」
 田山は元の課長の席に向かう。しかしそこには別の男性が座っていた。
「おい、そこをどけ、そこは俺の席だ!」
「な、何を言ってるんだ? 田山君?」
 田山があまにもヒステリックに叫んだため、人が集まってくる。
「田山さん、落ち着いて。ちょっと医務室に行こうか」
 数人に取り押さえられる田山。
「離せ、俺は、俺はっーーーー!」
 叫びながら田山は部屋の外へ連れていかれた。

「ふむ……」
 田山以外は田山のことをOLと認識していた。つまり弱く存在をコピーするというのは、コピーされた本人のみ認識が変わらないということか。
「あの、課長」
 俺は田山の代わりに課長になっている男性に話しかけた。
「ちょっと田山さんの様子が心配なので、様子を見に行っても良いですか?」
「そうだな。ちょっとおかしかったし、ちょっと落ち着かせてきてくれ」
 田山が課長ではなくなったおかげで、無駄な雑用をしなくてすんでいるため、俺は仕事に追われることなく、余裕があった。
「ありがとうございます」
 俺は、仕事を中断し、医務室に向かった。

「医務室は……二階か」
 医務室はビルの一角にあった。中から叫び声は聞こえない。田山も落ち着いたのだろうか。
「失礼します」
 ドアをノックして中に入る。
「はい、どうしました?」
 優しそうな笑みを浮かべて勤務医の女性が出迎える。そうだ、せっかくだから左手の能力も試してみよう。
「あの、ちょっといいですか」
 勤務医を俺の近くに呼ぶ。そして力を弱めに込めて左手で勤務医に触れた。すると体に大きな変化はないが、OLの制服から白衣に変わっていた。
「あれ、あなたは誰? さっきはOLさんがいたような」
「えっと……」
 俺は首にかけている社員証を見る。そこには勤務医 福山 智美とかかれていた。
「あ、あれ? 新しく来た人かな」
 どうやら力を弱くして存在をコピーすると、コピーされた人だけが認識が変わらないということか。
「あ、でも勤務シフトに入っているわね。あれ、もう休憩時間?」
 勤務医は壁に貼ってある勤務表を確認している。俺が勤務医になったことで、勤務時間も変わったのだろう。しかも都合が良いことに、今は俺の勤務時間のようだ。
「じゃ、じゃあ、後はよろしくお願いね」
「わかりました」

「さてと……」
 田山を捜しに来たんだった。周りを見渡すと、ベッドに人影が見えた。
「いた!」
 田山が寝ていた。おそらく騒ぎ疲れたんだろう。苦しくないように、ベストが脱がされ、ブラウスも緩くしてあった。
「うーん……」
 田山が寝返りをうつ。その仕草がとても色っぽい。
「ちょっとイタズラしてみようかな」
 はだけた胸元から手を入れる。すっかり女の体となってしまった田山の柔らかい膨らみをわし掴む。
「あぁん……」
 悩ましげな声をあげる。俺は調子に乗ってさらに胸をもむ
「んぅ…、え!? 何だ、胸が、ひゃあん!?」
 田山が目を覚ましたようだ。
「ああん、やめっ……、お前は、誰だ!?」
 そうか、OLから勤務医に変わったから、俺が誰かわからないんだ。それなら。
「田山さん診察のお時間ですよ」
 社員証を見せる。
「し、診察だと…!? これはどう見ても……ああん」
「大人しくして下さい。女性なら胸を触診されてもそんなはしたない声をあげないで下さい」
「俺は男だ!!」
「男?」
 田山をベッドに押し倒す。そしてブラウスのボタンをすべてはずし、脱がす。ブラジャーに包まれた胸がさらけだされる。
「その胸、どう見てもあなたは女性じゃないですか」
「ちがう、さっきまでは俺は……」
「じゃあ確かめてみましょうか」
 田山の服を脱がす。田山はすっかり抵抗する気を失っていた。
「ほら、あなたはやはり女ですよ」
「俺は…、おれは……」
「ふう、仕方ないですね。女ということを分からせてあげます」
「え!?ひゃあ、何を……ああん」
 田山の秘部を指でなぞる。ビクンと体がはねる。
「ほら、ちゃんと反応してますよ」
「ちが……、違う」
 否定はしているが、足をもぞもぞさせて、明らかに感じている。俺は指を秘部に入れる。
「ひゃうううっ!」
 大きく体を反らす。田山のアソコから熱い愛液が溢れだし、俺の指にまとわりつく。
「あん、ああん」
 指で内壁を掻く。指を動かすたびに田山の体が反応し、腰が浮いてくる。
「やめろぉ…、俺が、いやぁ…、おかしくなるぅぅ……」
 真っ赤な顔をして、体から受ける快感に耐えようと必死で叫ぶ。
「ここも、触るときもちいいですよ……。ん…ちゅぷ」
 俺は指を動かしたまま、田山の柔らかい胸に吸いつく。大きく立った胸の先端は簡単にくわえることができた。
「ひああ、胸が、アソコが、変になるぅ……」
 田山は俺のなすがままになっていた。
「いや、ああん、ああああああん!!」
 大きな声を上げて、田山は絶頂をむかえた。



「ふう……自分で女性の快感を得るのもいいが、人を感じさせるのもいいな」
 俺は、ベッドの上で気を失っている田山を見て、つぶやいた。
「さて、女医のままだとやっかいだし、OLに戻るか」
 俺は左手で田山に触ろうとする。
「そうだ、今度は強く触ってみるか」
 せっかくなので、また田山を使って実験することにした。今度は左手に強く力を込め、田山に触れた。
「う、うわっ、な、何だ?」
 左手に強い衝撃をうける。何かを吸い取って、体の中に入ってくるようだ。
「う、うわあああ!?」
 俺は、一瞬意識を失った。

「うーん、どうなった?」
 俺はOLの制服を着ていた。
「OLに戻ったのか?」
 周りを見渡してみる。ベッドに寝ていた田山の姿が消えていた。
「田山はどこへ行ったんだ?」
 と、そこへ女性の声が聞こえてきた。
「もう、落ち着きましたか、田山さん」
 この医務室に入ってきたときに会った勤務医に話しかけられる。俺がOLに戻ったから、勤務シフトも元に戻ったのだろう。それよりも――
「田山さん?」
 俺に向かって彼女はそう話している。
「まだ、混乱しています? 田山さん?」
 また俺のことを田山と呼ぶ。もしかして
「か、鏡はありますか」
「え? あ、はいどうぞ」
 俺は手鏡を受け取る。そして自分の顔を確認する。
「こ、これは」
 そこに映っていたのは、女になった田山の姿だった。

「まだ、少し興奮しているようですね。もう少し横になってましょうね」
 勤務医に言われて、俺はベッドに横になる。
「存在を……奪ったのか?」
 俺の左手は相手の存在をコピーすることができる。それを強くするとコピーを越えて、相手の存在、今回の場合田山という存在そのものを奪ってしまったということか。
「俺は何てことを……」
 これから田山として生きていかなければならないのか。
「あれ……、これは…」
 ふとベッドの横を見ると、マネキンが置いてあった。
「ひょっとして」
 田山という存在が俺になっている。ということは元の田山の存在は――
「これが元の田山ということか」
 存在を奪われて、マネキンになってしまったということか。
「じゃあ、これに触れば」
 俺は右手に力を込めて、マネキンに触る。するとマネキンの姿が女性の形をとり、OLの制服が着込まれた。
「あ、あれ?」
 しかし元田山のマネキンはそのまま動かない。田山という存在を奪われマネキンとなってしまっては、いくら俺が普通に存在を与えても姿が変わるだけでマネキンのままなのか。
「じゃあ……やっぱり……」
 右手を見る。しかし、左手で強く力を込めて触ったら存在を奪ってしまったのだ。逆に右手で強く力を込めて触ってしまったら――
「ええい、なるようになれだ」
 俺は右手に強く力を込め、マネキンに触れた。
「うわあ!!」
 右手から何かが吸い取られる。俺は先ほどと同じように一瞬意識を失った。


「落ち着きましたか?」
「俺……女?」
「田山さん?」
 勤務医と田山が話している。田山は元に戻ったようだ。自分がOLになっていることは覚えていたようだが。

 そして俺は、その様子をマネキンの体で見ていた。

 右手で元田山のマネキンに触れた時、俺という存在が無くなり俺がマネキンになっていた。声は出せないが、田山がマネキンになったときとは異なり、動くことはできた。しかし、俺が動いても誰も驚く様子を見せない。まるで透明人間にでもなったようだ。
 試しに勤務医の体を左手で触ってみた。しかし服装と体つきが変わっただけで、誰も俺を認識してくれなかった。

「俺が……俺という存在が無くなってしまったのか」
 俺は会社を飛び出していた。

 誰も俺に気がつかない。
(うわっ!?)
 人にぶつかる。すると簡単に俺がはじきとばされた。ぶつかった相手は、ぶつかったことに気づかない。
(わあーー!!)
 はじきとばされた俺の目の前を車が通り過ぎる。危うく車にひかれそうになる。
(このままじゃ……)
 誰も俺に気がつかず。俺は誰にも知られることなくのたれ死んでしまうだろう。
(存在が無ければ……誰かから奪えば……)
 とそこへ一人の女性が通りかかる。なかなかの美人だ。こんな女性になれば人生が楽しいかもしれない。
 俺はその女性に近づき、左手に強く力を込めた。

 
 女性が何事も無かったように歩いていく。

 俺はマネキンのままだった。結局俺は女性の存在を奪うことができなかった。
(人の存在を奪って、まで生きていくことなんてできないな)
 一生マネキンのまま、ひっそりと生きていくことを選んだ。その時。

「よくぞ言った」
 神が俺の目の前に現れる。
「お主が、人の存在を奪って、のうのうと生きていく選択をすれば、その右手を返してもらって一生マネキンのままでいてもらうところだったぞ」
(えっ?)
「お主には悪いが、少し試させて貰った。人間に神と悪魔の力を持たせているのは不都合ではないかと上から意見があってな。悪用したりしないかとお主の行動を監視しておったのだ」
(試されていたのか……)
「いや、重ね重ねすまんの。お詫びにお主の存在を元に戻してやろう」
(そんなことができるのか!?)
「存在の神は無から有の存在を作り出すことが出来るからな、ほれ」
 神の手が光ると、その手が俺に触れられる。

「うん、あ、俺?」
 男の体。発したのは元の俺の声。鏡は見ていないがたぶん俺の姿だろう。
「戻った、戻ったんだ!」
 俺は自分の体を自分で抱きしめる。
「もう、この力は使わない方がいいのかもしれないな……」
「いや、少々のことは別に使ってもこいつらは何も言わないぜ」
 いつの間にか悪魔の男も現れる。
「現に、田山という男を女にしたことに関してはスルーしてるだろ。田山は男よりも女になった方が会社のためだったんだよ」
「悪魔め…、余計なことを」
 俺はキョトンとした顔で神と悪魔を交互に見る。

「ゴホン、ま、まあ、これまでどおり、あまり気にせずその力を使うがよいぞ。それじゃあの」
「あ、ああ」
 神がその場から消えた。
「ふん。都合の悪いことはごまかしやがって。それじゃあな、人間」
 続いて悪魔もその場から消えた。


「ふう……」
 大変な一日だった。いつの間にか夕方になっていた。
「ん?」
 ふと見ると、今日俺が働いていた会社のビルから、綾さんと田山が仲良く出てきた。いや、田山の方は何だかぎこちなかった。
 俺を介して綾さんの存在をコピーしたのだ。綾さんと田山は同期入社という間柄になっているのかもしれない。

「さて、俺も帰るか」
 俺は両手に力を入れないように、家路についた。
「神と悪魔の手、使い方を間違えないようにしないとな」

 
おわり



この『神と悪魔と存在の手』ですが
拍手もかなりいただいており、またコメントでも続編のリクエストを受けまして、久しぶりに書いてみました。
しばらく書いていないと、設定を忘れてしまいますね。

それでは

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コメント

智美が智子に?

  • 2012/02/05(日) 12:41:06 |
  • URL |
  • T #mQop/nM.
  • [編集]

うっほおーうっ!
加減ができるようになって、ますます能力の愉しみ方が多彩になりましたね。
本人の自覚を変えないまま「存在の設定」だけを変化させることで、TS者を外から見る楽しみも得られますしね。実に魅力的な右手です。

  • 2012/02/05(日) 17:39:13 |
  • URL |
  • nekome #lWxbDKCI
  • [編集]

>Tさん
すみません、ご指摘ありがとうございます。
主人公の女性名は智美が正しいです。
修正します。

>nekomeさん
続き物の話ですと、主人公だけTSするのは、女の体になったことの慣れが出てきて、戸惑いの部分が上手く出せないと思いましたので、強弱の設定を付け加えました。
設定が先行しすぎているところもありますので、上手く調理できるように頑張ります!

  • 2012/02/05(日) 18:52:58 |
  • URL |
  • ひよとーふ #-
  • [編集]

今回も良作ですね。
憑依バーの続編かけますか?

  • 2012/02/07(火) 01:05:08 |
  • URL |
  • g #-
  • [編集]

>gさん
ありがとうございます!
憑依バーの続きは、まだ構想していないのですが、
気分転換に書いてみようかなと思っています。

  • 2012/02/07(火) 22:45:18 |
  • URL |
  • ひよとーふ #-
  • [編集]

憑依バーも神手も、ロリ分が次はほしいですね。

  • 2012/02/09(木) 03:05:14 |
  • URL |
  • kk #BRhx2hKI
  • [編集]

>kkさん
神と悪魔と存在の手は、実は2話で小さい子になっていたりします。
憑依バーにはそういった描写が無いので
書いていきたいですね。

  • 2012/02/11(土) 11:20:59 |
  • URL |
  • ひよとーふ #-
  • [編集]

神と悪魔がマヌケな中間管理職っぽいところが、共感?が持てたりして、、。ともかく、楽しく読ませて頂きました。

  • 2012/02/11(土) 17:12:36 |
  • URL |
  • TGG #-
  • [編集]

>TGGさん
コメントありがとうございます。
神と悪魔は実際サラリーマンっぽく書いていたりします(笑)
似たような商品を扱うライバル会社みたいな関係です。

  • 2012/02/11(土) 23:43:09 |
  • URL |
  • ひよとーふ #-
  • [編集]

久しぶりの更新ありがとうございます~。

りある・りふれくしょんも是非お願いします!

  • 2012/02/21(火) 08:02:25 |
  • URL |
  • #-
  • [編集]

主人公偉いですね。
ちゃんと神様は良い行いを見ているのか。。

何か少しだけですが、元気を貰った気がします。
最近色々落ち込んでいたので
ひよとーふ様、良作ありがとうです!!!

  • 2012/02/22(水) 19:34:05 |
  • URL |
  • 雷 #-
  • [編集]

>名前無記名さん
りあるりふれくしょんも続きを書きたい作品ですので
早く公開できるよう、頑張ります!


>雷さん
常識人なのが、この作品の主人公の特徴です。
女性の体には興味深々ですが(笑)

私の小説で元気をあげることができて嬉しいです!
こちらこそありがとうございます。

  • 2012/02/26(日) 22:20:01 |
  • URL |
  • ひよとーふ #-
  • [編集]

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