営業での外回り、今日のノルマを達成した俺は、駅前のコーヒーショップで休憩をしていた。
「今日もまた同じことの繰り返しか……」
就職して数年、決して仕事がつまらない訳ではないが、大きな刺激のない毎日を退屈に思っていた。
「あははっ! でさー」
「うん、それで……」
ふと周りをみると、寄り道をしている大学生や高校生がたくさんコーヒーショップにたむろしていた。
「今度はどの人にしようかー!」
「うーん、良い人が見つからないねー!」
楽しそうに話している女子高生の集団。俺も学生時代は友人とたわいもない話で盛り上がっていたものだ。
「今日はもう、帰ってしまおうかな……」
何だかいたたまれなくなった俺は、このまま直帰すると会社に連絡しコーヒーショップを後にしようとした。
「おーい、おじさーん」
先ほど楽しそうに話していた女子高生の一人が叫んでいる。
「おじさんってば」
その娘は俺にむかって話しかけている。
「……ん?俺?」
女子高生に知り合いはいない。なぜ呼び止められるのかがわからない。
「うん。ちょっと私たちと遊ばない?」
こんな夕方から援助交際の誘いなのだろうか。後ろにはさらに女子高生が2人。どうやら3人組のようだ。
「あきー、そんな風に言ったら警戒されちゃうよ」
後ろの女子高生のうちの一人が、俺と俺の前にいる女子高生の会話を遮る。
「えんこーとかじゃないから。えっと…そう社会勉強。ちょっと私たちとお話しようよ。もう仕事終わりなんでしょ?」
この娘たちの真意はわからないが、若い女の子に囲まれるのも悪い気はしない。何かされそうになっても、所詮女子高生だ。男の俺なら何とかなるだろう。とりあえず話でも聞いてみるか。
「話って、何?」
「まあまあ、こっちに来てよ」
女子高生はそう言うと、俺をコーヒーショップの奥の席に連れ出した。
「さて、改めて話って何だい?」
4人掛けのテーブルに座っている俺と女子高生の3人
「その前に自己紹介するね。おじさん。私はあき」
俺の席の向かい側、最初に俺に話しかけてきた女子高生が話し出す。物怖じしなさそうな性格、少し茶色に染めたセミロングの髪が特徴の娘だ。3人の女子高生の中では一番あか抜けているような印象をうける。
「そしてこの娘が、ゆか。そっちの娘はさえだよ」
「よろしくね!」
俺の隣に座っている、俺に2番目に話しかけてきた娘がゆかだ。この娘もあきと同じかそれ以上に元気な娘だ。ボブカットの短い髪がますますゆかを活発に見せている。
「……よろしくお願いします」
そして2人とは対照的なのが、あきの隣に座っているさえだ。小さな声で話し、大人しそうな印象だ。あまりこちらに目を合わせようとしない。
「で、おじさんの名前は?」
あきが訪ねてくる。
「ああ、俺は武則。山脇武則だ」
「そっか、よろしくね。武則さん!」
「じゃあ、早速。武則さん、あたしで遊んでみる気はない?」
「はっ!? ……げほっ、げほ」
あきの言葉に、俺は思わず飲んでいたコーヒーを吹き出した。やはり援助交際の誘いだったんだろうか。
「ちょっと、だからそんな言い方だと誤解されるって」
あわてた様子でゆかが会話に割り込んでくる。
「え、だって間違ってないじゃん?」
「それはそうだけど……。いいわ、私が説明する」
そう言うと、ゆかは俺に顔を近づける。
「武則さん?よく聞いてね。この娘、あきになってみたくない?」
「……どういうこと?」
「あーもう、わからないかな。入れ替わるのあきとあなたが」
あきといい、ゆかといい、何を言っているのかさっぱりわからない。
「……一度試した方が早いと思う」
ぼそっとさえが呟く。
「そ、そうね」
あきは一息つくと、おれの前に金属製の腕輪を差し出した。
「武則さん、この腕輪を付けてくれない?」
俺は言われたとおり、腕輪を腕につける。あきも同じような腕輪を手につけていた。
「その腕でじゃああたしと握手して」
あきは、腕輪をしている方の手を俺の前に差し出す。
「え、ああ」
俺はあきの手を掴む。あきのやわらかい手の感触が伝わって……
「な、何だ……」
体の中から何かこみ上げてくる。それが腕輪をしている右手に集まってくるようだ。右手を離そうとするが、なぜか離すことができない。
「う、うわっ……」
俺の意識が抜けていく。それと同時に右手から何かが入ってくる感触を感じた。
「あれ?」
気がつくと、座っている場所が変わっていた。壁を向いて座っていたはずが、壁を背に座っていた。
「いつの間に?」
俺の横にはさえが座っている。そして向かいの席にはゆかと――
「お、俺!?」
がたっと席を立ち上がる。その拍子に胸がかすかに揺れ、髪が頬と首をくすぐる。慌てて下をみると青色のリボンが見えた。それだけではない。クリーム色のセーターそしてグレーのチェックのスカートを俺は着ていた。
「な、なんだこれ……んぐ…」
俺が叫ぼうとしたところを、さえの手が俺の口を塞いだ。そしてそのまま俺を座らせる。男の俺が、さえに、女子高生の細腕で簡単に押さえつけられている。
「大声を出さないで、落ち着いて…」
あれだけ俺のことを見ていなかったさえが、俺をじっと見て、さらに体を密着させている。そんな状況に俺は興奮するが、何故か股間の生理現象の感覚がなかった。
「落ち着いて聞いてね。あなたはあきと体が入れ替わったの。その腕輪でね。だからあそこのあなたの体の中にいるのはさえなの」
淡々と話すたえの言葉に、だんだんと冷静になってくる。再び向かい側の席に座っている俺を見ると、笑顔で手を振っていた。あんなことは俺はしない。
「じゃあ、今の俺は……あきになっているのか」
改めて自分の体を見る。俺は先ほどまであきが着ていた制服姿だった。先ほどは立っていて見えなかったが、短いスカートから細い足と紺のソックスが見えた。
「はい、鏡」
さえから手鏡を受け取る。鏡をのぞくと、そこには驚いた顔のあきが映っていた。鏡の前でいろんな顔をすると、それにあわせてあきの顔が変化する。
「ちょっとー、私の顔で遊ばないでよ」
「え、ああ。すまん」
口から出る声もあきの声だった。
「それじゃあ、行こうか」
俺の体のあきと、ゆか、さえが立ち上がる。
「え、どこへ?」
「女子高生で遊んでみないって言ったでしょ。遊びを体験させてあげる……そのかわり、遊ぶお金は出してね」
そう言うと俺の手を引いて、コーヒーショップから連れ出した。
俺は女子高生として、街を歩いている。慣れない女性の体、慣れない制服に恥ずかしさがこみ上げる。
「ほら、あき、そんな元気のない顔をしない」
ゆかが話しかけてくる。
「あ、あきって俺のことか……?」
「どう見たってあきでしょ。あと俺とか言わない」
「わかった……わ。どこへ行く……の?」
「買い物。楽しいよ」
女子高生3人とサラリーマン1人。そんな奇妙なグループが向かった先は、駅前のブティックだった。ティーン向けの服が売られている、俺にはまったく縁のないところだ。
「誰の服を買いに着たんだ?」
「あなたのよ、あき。まずは女子高生らしくかわいい服を買いましょ」
そう言うとゆかとさえは俺の手を引き、試着室の前につれていく。そして俺以外の3人それぞれが店の服を物色し、俺の前に持ってきた。
「さ、着てみて。似合うと思うよー」
ゆかがにこにこしながら服を手渡す。
「着てって…?」
「試着。さあ脱いで」
さえも自分が選んだ服を俺に手渡す。
「脱ぐって、あきは良いのか?」
試着するということは、今自分が着ている制服を脱がなければならない。すると当然下着姿になるわけで。
「あきは君だろ。君が脱ごうが何しようが君の勝手じゃないか」
俺の姿のあきが、にやにやした顔で、俺のような口調で答える。そしていつの間にかあきも服を物色してきたようで、それも俺に手渡し、俺を試着室に押し込んだ。
試着室に入れられた俺。鏡には服を手に持ち、頬を赤らめたあきが映っていた。
「か、かわいい……」
じっくりと全身を見る。意外とスタイルがいい。
「ぬ、脱ぐからな……」
外に3人がいる以上、もたもたしていると変に思われるかもしれない。早く着替えてしまおう。俺はセーターを脱ごうとする。髪の毛がセーターに引っかかり、うまく脱ぐことができない。セーターによって逆立てられた髪の毛から香り立つ甘い匂いが俺をくらくらさせる。
「うわ……」
セーターを脱ぐと、その下にはブラウスを着ていた。薄手のブラウスからは、ブラが透けて見えている。
「これも脱がないとな……」
リボンをはずし、スカートのホックをはずすと、バサッとスカートが下に落ちる。鏡を見ると、ブラウス一枚の姿を堂々と俺の前にさらしているあきの姿があった。
「……うっ」
このままだとおかしくなる。俺は急いでブラウスも脱ぎにかかった。ボタンをはずすのに戸惑いながらも何とかブラウスを脱いだ。
「あう…」
上下がピンク色であわせてある下着姿のあき。当然胸にはブラをしている。それにショーツには余計な膨らみがない。それを改めて認識すると、自分は女子高生の体になったんだとと実感させれれる。自分の姿に見とれ、体の中が熱くなってくる。
「まだ着替え終わらないのー?」
外からの声に我にかえる
「ああ、待ってくれ」
俺は急いで着替えを終わらせた。
「よし、これが一番似合ってるわね」
俺は3人に着せかえ人形にさせられていた。その中からあきは一つの服を選んだ。
「確かにな」
鏡の中のあきは制服姿とは別のかわいさを見せていた。ずいぶんと大人っぽく見える。
「やっぱり外から見るのが一番ね」
俺の姿のあきは満足気にうなずく。
「じゃあそろそろ交代ね」
ゆかが俺の姿のあきから腕輪を取ると、俺に手を差し伸べていた。
「え!?」
「さっきと同じようにやればいいから」
俺はゆかと手を合わせた。
「あ、ああ!?」
視点が変わっていた。目の前にはあきがいる。そして俺は再び制服を着ていた。おそらく、ゆかになっているのだろう。
「よし、じゃああきとも交代」
俺の右手から腕輪を奪うと、俺の姿のあきに渡し、二人は体を入れ替えた。これであきは元の姿に、そしてゆかが俺の姿になっている。
「じゃあ、今度は私の番だから」
俺の姿のゆかが、再び俺を試着室に連れ出した。
「ひょっとして、また……?」
「そう。また着せかえ人形になってもらうからね」
そう言うゆかの手にはすでに服が用意されていた。
ゆかはあきよりも引き締まった体をしていた。スポーツでもしてるんだろう。ただ、あきと同じくじっくりと堪能することはできなかったが。
「よし、こっちの服がいいな」
ゆかも満足するコーディネートが決まったようだ。
「ふう、じゃあ今度は……」
「わたしの番……」
さえが俺の手を握り、俺はさえになっていた。
3人の服が決まると、俺は元の姿に戻された。
「何だか落ち着くな」
立て続けに他人の、しかも異性の体になっていたため、やけに自分の体が懐かしく感じる。
「それじゃ、今日はありがとねー」
あきが明るく答える
「え、おいその着ている服はどうするんだ」
「心配ないよ、もうお金払ってるから、武則さんが」
「まさか……入れ替わっていたときに……」
「武則さん、あまりお金持ってなかったから、カード使っちゃった」
「おい、金を返せよ!」
俺は声を荒げ、あきに詰め寄る
「返すも何も、武則さんが自分で払ったんでしょ、その体で」
「くっ……」
「3人の女子高生の着替えを堪能できたでしょ。安いと思わないとねー。それじゃあね、ばいばい!」
そう言うと3人は俺を置いてどこかへ言ってしまった。
「あいつら、あのコーヒーショップで金づるを探していたんだな…」
入れ替わって俺に買い物代を支払わせるつもりだったんだろう。
「ふふっ」
少し笑いがこみ上げてきた。あきの言ったとおり女子高生の体になって、着替えを覗くことができたのだ。こんな貴重な経験ができるなら、服代なんて安いものだ。
でも、それ以上のことも経験したくなる。着替えをしていたときの体の火照り。その先を知ってみたいと思っていたのだ。
「ははっ……これさえあれば……」
俺の手には、腕輪が二つ握られていた。あきに詰め寄ったときあきの鞄に入れていた腕輪を抜き取っていたのだ。
「刺激的な毎日が送れそうだな…」
「ん……な、何か出る……」
「あん……、あ…、あああん!」
俺は会社の女子社員と入れ替わっていた。女性の体の快感。それは俺の想像以上のものだった。
「すごいよ、武則。男の人ってこんな感じなんだ」
「はあ……はあ…、お前の体も感じやす過ぎ…」
女性も異性の体には興味があるようだ。体が入れ替わるという倒錯感もあるのだろう。
「よし、もう一回しよっ!」
「え、ちょっと、ひゃああん…」
ちょっと刺激的すぎる日々になってしまったかもしれない。
おわり
早速更新が滞ってしまいました。
しばらく書いていないと、なかなかうまく表現するのが難しいです。
ちょっとずつ慣らしていこうと思います。
それでは